曲げ加工は、精密板金加工において最も重要といわれる加工技術です。 上に付ける金型をパンチ(Punch、上型)、下に付ける金型をダイ(Die、下型)と呼び、パンチは押し付ける役割(凸型)、ダイはそれを受ける役割(凹型)を担っています。金型の形により直線的なV曲げのほか、U曲げR曲げなどのさまざまな形状や角度に曲げることができます。 |
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曲げ加工の難しさと対策(スプリングバック)
<スプリングバックとは>
スプリングバック(Spring Back)とは、金属板を曲げた後に、材料の弾性変形により元の形に戻ろうとする現象です。
金属は曲げると塑性変形(永久変形)しますが、一部には弾性変形(元に戻る力)も含まれます。そのため、プレスで曲げた直後は狙った角度に成形されていても、金型から取り出すと少し戻ってしまうのです。特に、ハイテン材(高張力鋼)やアルミニウム合金ではスプリングバックが大きくなります。
<スプリングバック対策>
プリングバックを抑えるためには、以下の方法を組み合わせます。
① 曲げ角度の補正
・スプリングバックを予測し、狙いの角度よりも少し深く曲げることで、最終的に狙った形状を得ます
・例えば、90°に仕上げたい場合、実際には88°や85°に曲げるなど、経験とデータをもとに調整します
② ボトミング加工
・ボトミング(Bottoming)とは、パンチをダイに押し込む力を強くすることで、塑性変形を増やす方法です
・これにより、材料が戻る力を抑え、スプリングバックを小さくできます
③ コイニング加工
・コイニング(Coining)は、さらに強い圧力を加えて板金の分子レベルで変形を固定する方法です
・ボトミングよりもさらにスプリングバックが少なくなり、高精度な曲げが可能になります
④ 適切な金型選定
・ダイのV溝サイズを小さくする(より狭いVダイを使うと、スプリングバックが抑えられる)
・Rパンチの形状を最適化する(適切なR形状のパンチを使うことで、戻りを制御)
⑤ 材質の特性を考慮
・ハイテン材(高張力鋼)はスプリングバックが大きいため、加工条件を慎重に設定
・アルミは戻りやすいので、ボトミングを併用
・ステンレスは硬いがスプリングバックは比較的少ない
当社ではこれらの対策を組み合わせて、スプリングバックを適切にコントロールしています。
曲げ加工の難しさと対策(曲げこぶ(ストレッチマーク))
<曲げこぶ(ストレッチマーク)とは>
曲げこぶとは、曲げた部分の外側(引張側)にシワや盛り上がりが発生する現象です。
発生する主な原因は次の通りです。
・板厚のばらつきや材料の性質による影響
・曲げ外側が引っ張られすぎて塑性変形(永久変形)が不均一になる
・曲げ半径が大きい(伸びる範囲が広がりこぶができやすい)
<曲げこぶ(ストレッチマーク)対策>
曲げこぶを抑えるためには、以下の方法を組み合わせます。
①適切な曲げ方法
・段階的な曲げ(プリベンディング)を活用し、一気に曲げない
・ボトミング加工を用いて、均一な塑性変形を促進する
②適切な金型(パンチ・ダイ)選定
・RパンチやRダイを使用し、急激な変形を防ぐ
・曲げ半径を大きくしすぎない(適度なR設定)
③材料の選定
・加工硬化しにくい材質を選定する(例:軟質アルミニウムや軟鋼)
・素材をまとめて購入するなどにより、ロットによるバラつきを最小限に抑える
当社ではこれらの対策を組み合わせて、曲げこぶの発生を抑えています。
曲げ加工の難しさ(割れ)
<割れとは>
割れは、曲げた部分の内側や外側に発生する亀裂や破断のことで、特に高張力鋼やステンレスなどの硬い材料で発生しやすい現象です。
発生する主な原因は次の通りです。
・曲げ外側に過剰な引張応力が発生し材料が耐えきれずに破断
・材料の延性(引張時に変形する能力)が低い
・曲げ加工時のRが小さすぎる(外側の伸びが大きくなり割れやすい)
・材料の繊維方向(ファイバーフロー)が不適切
<割れ対策>
割れをを抑えるためには、以下の方法を組み合わせます。
①曲げ半径(R)の適正化
・板厚の3倍以上のRを確保する(特に高張力鋼では重要)
・小さなRを必要とする場合は、段階曲げやプレス圧力の調整を行う
②板金の繊維方向(ファイバーフロー)の考慮
・板金の繊維方向(ファイバーフロー)を考慮し、曲げ線を繊維方向と直角にしないように調整
③適切な潤滑
・潤滑油を使用して摩擦を低減し、負荷を均一化
当社ではこれらの対策を組み合わせて、割れの発生を抑えています。
当社の特徴
当社は長年の経験と多くの加工事例の蓄積により、上に記載したような曲げ加工の難しさを十分に理解しており、それへの対策も各ベテラン技術者がいわゆる「匠の技」としてしっかり身につけています。
加工設備だけでなく「匠の技」を組み合わせて、精度が高い加工を実現し、お客様のご要望に応えています。
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